崑央の女王

      2016/05/23


著者 : 朝松 健
角川文庫
ISBN4-04-192001-9


STORY

城南大学の助教授、森下杏里は、大学当局から、民間の研究施設、日本遺伝子工学株式会社のハイテクビル(通称、リヴァイアサン・タワー)への出向を命じられる。
そこで彼女は、古代中国、殷王朝の遺跡から発掘された「崑央(クンヤン)のプリンセス」と呼ばれるミイラの研究に携わる。
民間の研究には似つかわしくないような、厳重な警備の元、杏里は次々と奇妙な体験をする。

彼女の携わっているプロジェクトYINの真の目的とは何か?


“あの”朝松 健氏が書きおろしたクトゥルー神話
物語の主人公、森下杏里が時折見る白昼夢が、この物語の中で重要な役割を担ってくる。彼女の夢の舞台は、戦時中の中国なのだが、その中で、旧日本軍の731部隊が遭遇する「何か」が現代の日本に蘇るのだ。
また、杏里と、中国人科学者、リー博士が夢を通して、意識を共有する場面はHPLの書いた『銀の鍵の門を超えて』の中の、ランドルフ・カーターと魔道師ズカウバを思い起こさせる。夢と現実の錯綜するところが面白い。
作者の持つ魔術の知識を駆使した、読み応えのあるチャイニーズ・クトゥルー神話となっている。


おまけ その1:
ところで、作品中に「あと、4年で21世紀」という記述があるので、舞台は1997年8月1日から始まるわけですが、クトゥルー・オペラ同様、もう、過ぎちゃいましたね(^_^;)。

おまけ その2:
表紙の上部に "THE QUEEN OF KUN-YAN" とタイトルが書いてあるのですが、"KUN-YAN" って、 "K'n-yan" じゃないの?>角川さん

おまけ その2のおまけ:
おまけ2に書いた変なローマ字表記の件ですが、作者によると編集さんが無視しやがったそうです(^_^;)。

 - 日本のCthulhu神話